[ 編集者:学院史編纂室 2014年9月28日 更新 ]
学院財政
【沿革】
関西学院は、今日から見ればまさに「一粒の麦」のような一私塾として創設されたとはいえ、アメリカ・南メソヂスト監督教会あげての事業であっただけに、当初から郊外に1万坪(約3万3,000㎡)の大きな敷地を設けるというキリスト教主義学校にふさわしい環境とヴィジョンによって創立された。
その財源が教会の信徒が捧げる献金であったことは、学院財政とその運営のあり方を決定づけている。
その特徴の一つは、土地の購入や建物の建設に必要な臨時的な経費と、毎年度必要とする人件費を中心とした経常費とに分けられていたことである。
初期の段階では、教員は宣教師が中心で、彼らは本国アメリカ・南メソヂスト監督教会との契約で給与を支給されており、雇用した日本人教職員の必要費用も本国の教会から送金するという形をとっていた。
したがって、臨時に必要な土地代や建設費は、そのつど本国との協議で、時には個別に献金を募って、必要な資金の送金によってまかなわれた。
歴代院長は特に臨時の経費調達のために、しばしば本国に帰っている。
関西学院が高等教育進出に行き詰まったのも、本国からの資金調達が思うに任せなかったからで、それを打破し、1912年に高等学部設立を可能にしたのは、カナダ・メソヂスト教会との対等の責任による共同経営に踏み切ったからである。
アメリカとカナダの両教会によって、その後も土地・建物に献金が注ぎ込まれ、上ケ原移転によって大学設立が可能となった。
第二の特徴は、古い歴史を持つ私学全般に指摘できることかもしれないが、早い時期から募金活動が特に臨時的経費をまかなうために行われたことである。
時には学生の自発的な発意によって行われており、この伝統は関西学院創立70周年に現在の学生会館旧館を建設するにあたり、8,000万円の予算の半分を学生が自主的に負担することを学院に申し出て、学院に建設を促したことにも表れている。
関西学院が外国の教会の献金によって支えられるのは第2次世界大戦前夜までで、徐々にその比重は授業料や基金収入に移り、戦争の激化による宣教師の本国への帰還を境に、今日の学生納付金を中心とした財政に移行することになった。
それでも、初期からあった経常事業と建設事業の2本立て財政の組み立ては、私学財政が消費収支計算書と貸借対照表に統一されてもなお、その構造を実際の運営の枠組みとしており、これが財政健全化を維持する鍵につながっていると評価できる。
【参照】Ⅰ 91-95,283-292,464-469;Ⅱ 73-79,505-513
【現況】
1989年に創立100周年を迎えた学院だが、古き良き伝統を残しつつも、時代のニーズに合わせ、新たな領域にも果敢に挑戦してきた。
その挑戦こそ、現在の学院の発展に寄与したわけだが、その足跡は学院財政の歴史に見ることができる。
100周年以後の学院財政に影響を与えた主な事実としては、1995年4月の神戸三田キャンパス開設と総合政策学部を設置、2000年4月のK.G.ハブスクエア大阪(大阪梅田キャンパス)開設、04年4月の専門職大学院司法研究科設置、05年4月の専門職大学院経営戦略研究科設置、08年4月の関西学院初等部設置、大学人間福祉学部・大学院人間福祉研究科設置、09年度4月の学校法人聖和大学との法人合併と西宮聖和キャンパス開設、教育学部・大学院教育学研究科設置、10年4月の国際学部設置と学校法人千里国際学園との法人合併などが挙げられよう。
学生数の増加に伴い、学生生徒等納付金と補助金収入は増加傾向にある一方、人件費など支出も増えている。
通常、学校会計では財政の健全性を判断する指標として、学校法人会計基準に定められた3つの計算書(資金収支計算書、消費収支計算書、貸借対照表)のうち、消費収支計算書を引用することが多い。
学院でも経営の指針として、消費収支計算書における①帰属収支差額比率〈(帰属収入-消費支出)/帰属収入〉、②繰越消費支出超過額比率〈繰越消費収支差額/帰属収入〉、③借入金残高比率〈借入金残高/帰属収入〉を注視している。
現在の目標値はそれぞれ、①は8%以上、②は25%以内、③は25%以内と定め、適正な財務管理を行っている。
学院を取り巻く環境が大きく異なるため、一概に比較は出来ないが、以下では100周年以降(1990年度)の各指標に注目したい。
①帰属収支差額比率は、学費改定が毎年のように行われていた2000年度までは平均16.3%であったが、経済環境の悪化により、学費を据え置くことが多くなった01年度以降11年度までは平均11.3%(合併分および退職給与引当金特別繰入分を除く)となっている。
②繰越消費支出超過額比率は、02年度までは概ね10%以下で推移していたが、03年度以降は10%以上となり、11年度末で25.1%となっている。
③借入金残高比率は、1993年度までは35%前後で推移していたが、94年度からの建設ラッシュ(図書館・E号館・第1教授研究館(新館)・F号館・ハイテクリサーチセンター・関西学院会館・神戸三田キャンパスの整備等)を借入金でも対応したため、2001年度までは40%~60%のレンジで推移している。
02年度から3年間は借入を行わず返済に努めたため、30%前後に落ち着いてきており、11年度末で28.7%となっている。
建設ラッシュ時の借入金返済の一部は現在も続いており、消費収支に影響を与えている。
なお、2009・10年度の2校との合併を考えると、09年度の学校法人聖和大学との合併では、繰越消費収支差額はプラス3,000万円で、固定資産は121億円(簿価)分を無償で受け入れ、10年度の学校法人千里国際学園との合併では、繰越消費収支差額はマイナス29億5,000万円で、固定資産は98億円分(簿価)を無償で受け入れた形となっている。
学院は、ミッション・ビジョンの実現に向けて、また社会の変化に対応するために、持続可能な発展を目指す必要がある。
そのためにも、学院財政の健全性を維持することが求められよう。
【参照】Ⅱ 505-513【文献】『私学財政と学院の歩み』1975;関学HP「事業報告書及び財務状況」1999年度-;KG Campus Record(70,72,74,76,78,80,82,84)2002-2009;『事業報告書』(各年度版)