メニュー

吉岡記念館

yoshioka_img

第2代院長・吉岡美国と吉岡記念館

吉岡美国_フォースター画

吉岡記念館は、関西学院のために生涯を捧げた第2代院長・吉岡美國(よしおか・よしくに)の理念を受け継ぎ、具現化することを目指しています。

吉岡美国関連ページへのリンク

吉岡記念館にある機関

2006年 3月10日、西宮上ケ原キャンパスに竣工した吉岡記念館の前身は、1929年の上ケ原キャンパス開設時に設けられた「宗教館」です。W.M.ヴォーリズの設計による木造2F建てのこの建物は、その後の増築を経て、全面改築され、吉岡美国第二代院長の名を冠した鉄筋コンクリート造、地上3F建ての「吉岡記念館」として生まれ変わりました。
この「吉岡記念館」には、宗教センターのほか、キリスト教と文化研究センター、人権教育研究室、神学部事務室、研修室4部屋、ラウンジ、宗教総部、宗教音楽委員会傘下団体の部室などが配置され、学院のキリスト教主義教育を支援し、推進する機能が凝固し、拡充することになりました。
「聖書と礼拝なくして学院なし」と凛として言い放った吉岡元院長の魂は、今も学院に脈々と受け継がれ、息づいています。
 

聖書植物 -吉岡記念館ベルスクエア

吉岡記念館聖書の植物


吉岡記念館東側のベルスクエアには、スウィングベルが設置されているほか、聖書に記されている植物が20種類ほど植えられています。

聖書の舞台は、東地中海周辺の地域ですが、このベルスクエアに植えられている植物を観て、イエスをはじめ聖書に登場する人々が、日頃どんな植物に親しんでいたかを知ることができます。

聖書植物位置図


アネモネ -Anemone coronaria-

聖アネモネ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Anemone coronaria
聖書等による標記:『野の花』

イエスが山上の説教で、栄華を極めたソロモンとの対照で言われた「野の花」(マタイ6:29)は、ギリシア語ではクリノンです。これは、旧約聖書において「ゆり」と訳されているシュウシャン(ショーシャンナー)の七十人訳の訳語です。山上の説教は、新改訳では「野のゆり」と訳され、英語の訳でも多くはlilies of the fieldと訳されています。しかし、このクリノンは実際のゆりよりも広い範囲の植物を指し、アネモネのことであるというのが有力な説です。

アネモネは、キンボウゲ科イチリンソウ属の多年生草本で茎高15~30cmで、4~5月頃赤色、ピンクなどいろいろの色の花をつけます。花は直径4~8cmで、花びらの基は黒っぽく、周りは白くなっています。パレスチナの至る所に生育し、平原に多く、特にガリラヤ湖畔に美しく咲く。花は朝開き、夕方近くなると閉じてしまいます。
ゆりは、ユリ科ユリ属の多年草で、旧約聖書では美や繁栄の象徴として出てきます(雅歌2:1,4:5,ホセア14:6など)。これはマドンナ・リリーと言われるもので、白い花をつけ、キリスト教では純潔の象徴とされ、受胎告知によく描かれています。

なお、吉岡記念館横の「ベルスクエア」に植えられている「野の花」は、アネモネとカサブランカ、テッポウユリです。(『関西学院チャペル週報』より)
 


アラカシ -Quercus glauca-

聖アラカシ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Quercus glauca
聖書等による標記:『カシ(オーク)』

ブナ科コナラ属の樹木で、樹高が10~13mに及びます。旧約聖書で「カシ」の意味で使われているヘブライ語は、エーローン、アッローン、エーラー、アッラーなど多様ですが、パレスチナにはカシが数種類あり、イスラエル人はこれらの木を表すのに数種の語を使用していました。アブラハムがメソポタミアからカナンに移動し、シケムに到着したとき、モレの樫の木のところで祭壇を築いたとありますが(創12:6 - 7)、これはセイチガシ(Quercus calliprinos)と言われる常緑の樫の木と思われます。また、その後天幕を移して、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところにも祭壇を築きましたが(13:18)、今でもヘブロンの町外れのギリシア正教の教会の庭にセイチガシの大木が保存されていて、「アブラハムの樫の木」と呼ばれています。一本立ちのものは、聖所や墓地の目標とされました(ホセ4:13,創35:8)。材質は堅く、彫刻、船のオールなどに使用されました(イザ44:14,エゼ27:6)。

花は3~4月に開花し、果実は12月頃に熟します。たくさんの雄花を尾状花序につけ、まばらに上に穂状花序についている雌花の下に垂れ下がっています。葉は卵形から長楕円形で、縁は歯状です。(『関西学院チャペル週報』より)
 


イチジク -Ficus carica-

聖イチジク

植栽場所:吉岡記念館南東側
学名標記:Ficus carica
聖書等による標記:『イチジク』

いちじくはクワ科イチジク属の果樹で、樹高は普通3~5mですが、条件のよい所では10mほどになることもあるそうです。枝の広がりは8~10mほどになります。普通いちじくは年2回結実します。早春3月に小枝の先端に小さな緑色の瘤を生じますが、これは「青い実」(黙示録6:13)と呼ばれるものです。6月に成熟するのが「初なりのいちじく」(イザヤ28:4)と言われているものです。

果実は新鮮なまま食べるほか、乾燥させた「干しいちじく」もよく食用とされました(サム上25:18)。干しいちじくはまた薬用としても使われました(列王下20:7)。
聖書では、いちじくは70回ほど言及され、パレスチナにおける最もポピュラーな植物の1つです。これは聖書において最初に言及されている植物です。すなわち、アダムとエバは楽園で禁断の木の実を食べた直後に、いちじくの葉で腰を覆った、と言われています(創世記3:7)。いちじくはイスラエルを祝福する7つの産物のひとつとされ(申命記8:8)、また「自分のぶどうの木の下、いちじくの木の下に座る」ことは、平和と繁栄のシンボルとされました(ミカ書4:4 ,ゼカリヤ3:10)。(『関西学院チャペル週報』より)

エニシダ -Cytisus scoparius-

聖エニシダ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Cytisus scoparius
聖書等による標記:『エニシダ』

マメ科レタマ属の灌木で、高さ2~4mに伸び、葉は非常に小さくまばらで、針のようですが、それでも砂漠では結構気持ちのよい木陰を作ります。花は白色で、早春に開花し、長楕円形の鞘をつけます。ヘブライ語ではローテムと言い、旧約聖書に4回出ます(王上19:4,5,ヨブ30:4[新共同訳では『れだま』と訳されている],詩120:4)。

アラビア、シリアに一般に生じ、パレスチナの至る所の荒れ野の丘陵及び岩石地帯、特に死海の当たりに多く繁茂しています。
エリヤは、イゼベルの迫害から逃れてホレブに行く途中の荒れ野で、えにしだの木陰で休んだ、と言われています(王上19:4-5)。詩編120:4で「えにしだの炭火」と言われているのは、この木材が木炭を作るのに広く用いられていたことを示しています。この炭は固くて上質で、火持ちがよく、砂漠の民にとって大切な貿易商品となっていました。

えにしだの根は下剤、枝は解熱剤、傷の手当て、枝を粉にしたものを蜂蜜と混ぜて催吐剤、下剤や駆虫剤にしますが、果実は有毒であるので注意が必要です。(『関西学院チャペル週報』より)

オオアマナ -Ornithogalum umbellatum-

聖オオアマナ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Ornithogalum umbellatum
聖書等による標記:『鳩の糞』

ユリ科オーニソガラム属の植物です。ヘブライ語ではディブヨーニーム(ヒルィヨーニーム)と言い、聖書ではただ一箇所出てきます(王下6:25)。そこでは、アラム軍に包囲されたサマリアが陥った大飢饉の時に「ろばの頭1つが銀80シェケル、鳩の糞4分の1カブが5シェケルで売られるようになった」と記されています。この茎は生で食べると中毒になりますが、煮るか焼くかすると食べることができ、貧しい人の食料とされました。ヨセフスは、鳩の糞が塩の代用品であったと記しています(『ユダヤ戦記』)。学名をOrnithogalumと言い、これは「鳥のミルク」の意です。日本では「オオアマナ」と言われています。

パレスチナの丘陵や岩石の間に野生繁殖し、白い6弁の花を咲かせ、このため「ベツレヘムの星」と呼ばれています。イスラエル国旗に描かれている「ダビデの星」にも似、国民から愛されています。その花が断崖を真っ白に覆う様はあたかも「鳩の糞」で白くなったように見えるのでこの名がつけられたようです。また、学名「鳥のミルク」は、鳥が糞と一緒に排泄する白い液体?から来ているようです。(『関西学院チャペル週報』より)

オリーブ -Olea europaea-

聖オリーブ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Olea europaea
聖書等による標記:『オリーブ』

オリーブは聖書に151回ほど出、聖書における最もポピュラーな植物のひとつです。モクセイ科の植物で、樹高6 - 10mの常緑樹です。3 - 4年で実がなり、樹齢も300 - 400年に及び、中には1000年以上のものもあると言われています。春に白い花を房状に咲かせ、果実は緑から黒くなります。その実が食用となり、オリーブ油となります。オリーブ油は食用、薬用、また儀式用に用いられ、神々の木と崇められました。
聖書では、大洪水の後放たれた鳩がノアの所にオリーブの葉をくわえてきたとあり(創8:11)、オリーブをくわえた鳩は平和のシンボルとされました。

国連旗もオリーブの枝葉が地球を取り囲むデザインになっています。また、イエスが最後の夜を過ごされたオリーブ山は、文字通りオリーブ畑でした。そこのゲッセマネの園で祈られましたが(ルカ22:39-46)、ゲッセマネというのは「油しぼり」という意味で、ここでオリーブ油が作られていたのです。オリーブは、イスラエルを祝福する7つの産物のひとつとされ、神の祝福と繁栄の象徴でもありました(詩52:10)。(『関西学院チャペル週報』より)
 

カイノキ -Pistacia chinensis-

聖カイノキ

植栽場所:吉岡記念館北西側
学名標記:Pistacia chinensis
聖書等による標記:『テレビンの木』

「テレビンの木(カイノキ)」はウルシ科カイノキ属の大きな落葉樹で、樫(ブナ科コナラ属)とは異なります。しかし、聖書ではこの両者は混同されています。樹高は10~13mくらいにもなり、夏季にはよい日陰を作ります(創世記18:1)。大抵は一本立ちで、茂みや森林になることはありません。ヘブライ語ではエラーと言いますが、この文字には「エル(神)」の文字が含まれるので、力や強さを象徴しました。かなりの大きさになり、寿命も長いので、古代においては樫と同様聖なるものとされ、そのそばに聖所や墓地などが作られました(ホセア4:13)。アブラハムはカナンに移住したときにマムレのテレビンの木(新共同訳は「樫の木」)のところに祭壇を築きました(創世記13:18)。

葉は、いくつかの小葉からなる複葉で、冬に落葉します。雌雄異株で、ぶどうの房状の赤味を帯びた実を結び、食することができます。実からはタンニン油を取ることができ、また樹皮を傷つけてテレビン油を作りました。これは香料や薬用に使われました。(『関西学院チャペル週報』より)

カサブランカ(ユリ) -Lilium‘Casa Blanca’-

聖カサブランカ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Lilium‘Casa Blanca’
聖書等による標記:『野の花(ユリ)』

イエスが山上の説教で、栄華を極めたソロモンとの対照で言われた「野の花」(マタイ6:29)は、ギリシア語ではクリノンです。これは、旧約聖書において「ゆり」と訳されているシュウシャン(ショーシャンナー)の七十人訳の訳語です。山上の説教は、新改訳では「野のゆり」と訳され、英語の訳でも多くはlilies of the fieldと訳されています。しかし、このクリノンは実際のゆりよりも広い範囲の植物を指し、アネモネのことであるというのが有力な説です。

アネモネは、キンボウゲ科イチリンソウ属の多年生草本で茎高15~30cmで、4~5月頃赤色、ピンクなどいろいろの色の花をつけます。花は直径4~8cmで、花びらの基は黒っぽく、周りは白くなっています。パレスチナの至る所に生育し、平原に多く、特にガリラヤ湖畔に美しく咲く。花は朝開き、夕方近くなると閉じてしまいます。
ゆりは、ユリ科ユリ属の多年草で、旧約聖書では美や繁栄の象徴として出てきます(雅歌2:1,4:5,ホセア14:6など)。これはマドンナ・リリーと言われるもので、白い花をつけ、キリスト教では純潔の象徴とされ、受胎告知によく描かれています。

なお、吉岡記念館横の「ベルスクエア」に植えられている「野の花」は、アネモネとカサブランカ、テッポウユリです。(『関西学院チャペル週報』より)
 

ギンドロ -Populus alba-

聖ギンドロ

植栽場所:吉岡記念館南東側
学名標記:Populus alba
聖書等による標記:『ポプラ(ウラジロハコヤナギ)』

ヤナギ科ヤマナラシ(ポプラ)属の落葉樹。3 - 4種類あると言われるパレスチナのポプラは、水辺多湿の地に多い植物です。ヘブライ語ではリブネーと言い、2度出ますが(創世記30:37,ホセア書4:13)、これはウラジロハコヤナギと言われるものです。

ヨルダン川源流のバニアスのほとりには、この森林があります。高さは10mにもなり、幹は白っぽく、葉の裏も綿毛で白っぽく見えます。花は、葉の出る前に尾状花序を作ります。若い芽は、ニス様の樹脂でおおわれ、春、甘い香料のような芳香を放ちます。また、傷つけると、香りのよい樹脂がにじみ出ます。しばしば異教の聖所はポプラやテレビンの木の下に建てられました(ホセア書4:13)。日本にあるポプラの大半は(関学の校歌のポプラも)、「セイヨウハコヤナギ」という種類のものです。

ヤコブは、自分の家畜を増やすためにポプラとアーモンドとプラタナスの若枝の皮をはいで水槽の中に入れ、その水を家畜に飲ませた、と言われています(創世記30:37 - 39)。

ポプラの幹は種々の道具や木靴、屋根などの材料に用いられ、また葉は強壮剤や解熱剤に用いられました。(『関西学院チャペル週報』より)

ギンバイカ -Myrtus communis-

聖ギンバイカ

植栽場所:吉岡記念館南東側ほか周囲
学名標記:Myrtus communis
聖書等による標記:『ミルトス』

ミルトスは、フトモモ科ギンバイカ属の常緑灌木で、日本では普通ギンバイカ(銀梅花)と言います。ミルトスはラテン語の音写で、ヘブライ語ではハダスと言います。エステルは別名をハダサと言いますが(エステル2:7)、これはミルトスの意味です。ミルトスは低木で、成長しても2mくらいですが、条件がよければ10mほどの高さになることもあります。葉は3~5cmくらいの濃い緑色で、夏には白い美しい花が咲きます。花の後には黒みがかった青色の実がなります。これは香りが高く、生のままで、また乾燥させて食用とし、また香水用にも使われます。また、これは鎮痛剤としても使われました。

ユダヤ人は今日でも仮庵祭の時にこの木の枝を用います(ネヘミヤ8:15)。聖書ではこれは、神の寛大さの表象ともされました。ユダヤには、アダムが楽園を追われたとき、食物の長として小麦を、果物の長としてなつめやしを、香る花の長としてミルトスを携えることを許されたという伝説があります。ギリシア人は、この木が常緑のゆえに愛と不死の表象とし、ローマ人はこれを月桂樹と合わせて勝利者の冠としました。(『関西学院チャペル週報』より)

ゲッケイジュ  -Laurus nobilis-

聖ゲッケイジュ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Laurus nobilis
聖書等による標記:『ゲッケイジュ』

南欧原産のクノスキ科ゲッケイジュ属の常緑中高木。学名は、Laurus nobilisで、Laurusは「緑」、nobilisは「高貴な」の意。ヘブライ語はオーレンで、聖書ではイザヤ書44:14に出てきます。ただし新共同訳では「樅の木」、口語訳では「香柏」と、新改訳と岩波訳では「月桂樹」と訳され、英語でもpineとかlaurelなどと訳され、同定が難しいものです。

月桂樹はイスラエルに自生し、カルメル山やガリラヤに多く見ることができます。大きなものは3mにも及び、葉は長楕円形でなめらかで革質をなします。雌雄異株で、雌株は開花後10月頃に黒紫の実がつき、大きなものはオリーブの実くらいになります。

上品な木として庭園樹に多く用いられ、そのひこばえから出た長枝を用いて月桂冠が作られ、マラソンの勝利者にかぶせたのは有名です。それは、その葉の香ばしさと常緑性が繁栄のしるしと考えられたからでしょう。葉はベイリーフと言い、スパイスとして煮込み料理やピクルスなどに用い、しぼった月桂油は整髪料やソースの香料とされます。また、葉や果実は薬用として健胃や利尿、またリウマチなどに使われます。(『関西学院チャペル週報』より)

 

サフラン -Crocus sativus-

聖サフラン

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Crocus sativus
聖書等による標記:『サフラン』

アヤメ科サフラン属の球根植物で、クロッカスの一種です。学名をCurocus sativusと言います。ヘブライ語ではカルコムと言い、聖書には雅歌4:14に1回出るだけです。そこでは、ナルドやシナモンなどと共に「すばらしい香り草」の1つとして言われています。アラビア語ではザファランと言い(「黄色」という意味)、英語のsaffronの語源になっています。花茎は10cm内外で、11月ころ茎頂に香りの良い約3cmの淡紫色の美しい花をつけます。葉は線形で長さ20~30cmになります。花柱の上半部を採集し乾燥したものもサフランと言い、カロチノイド系色素のクロチンを含み、料理の色づけに使用されます。薬用としても鎮静、鎮痛、通過剤として用いられます。サフランを1g得るためには150個の花を採集しなければならず、非常に高価です。

古代人は、劇場の床に、サフランをぶどう酒と混ぜて敷き、また結婚式に広く使われたと言われています。また、香水としても使われ、客を家に迎え入れるときに、その衣服に振りかけた、と言われています。
日本でも秋咲きの観賞植物として栽培され、鮮やかな赤い花柱は3本に分かれています。(『関西学院チャペル週報』より)
 

ザクロ -Punica granatum-

聖ザクロ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Punica granatum
聖書等による標記:『ザクロ』

吉岡記念館の周りに植えられている植物の2回目はざくろです。これはザクロ科の落葉灌木で、樹高3~5m、5月頃に開花し、花弁は6つ、赤色の筒状の萼があり、枝には普通とげがあります。果実は球状で、熟すと裂けて赤い種子が現れます。果実は新鮮なまま食用にしたり、菓子やワインにもし、果皮は乾かして薬用に使われました。また、花は赤い染料の原料ともされました。

聖書では、ざくろはエジプトの優れた果実のひとつに数えられ(民数記20:5)、モーセに遣わされてカナンの地を偵察した斥候はぶどう、いちじくと共にざくろを携えて帰り(民数記13:23)、カナンの産物に数えられ(申命記8:8)、イスラエルを祝福する7つの産物のひとつとされました。ざくろは多数の種子を持つことから肥沃や繁栄の象徴とされ、その理由からソロモンの神殿や大祭司の衣服の装飾とされました(列王記上7:42、出エジプト記28:34)。また、その赤い花は美しい女性を表現するのに用いられました(雅歌4:3)。

新約聖書にはざくろは言及されていませんが、イエスも出入りしたとされているカファルナウムのシナゴーグ跡には、ざくろのレリーフが見つかっています。(『関西学院チャペル週報』より)

シラカシ -Quercus myrsinaefolia-

聖シラカシ

植栽場所:ランバス記念礼拝堂東側
学名標記:Quercus myrsinaefolia
聖書等による標記:『カシ(オーク)』

ブナ科コナラ属の樹木で、樹高が10~13mに及びます。旧約聖書で「カシ」の意味で使われているヘブライ語は、エーローン、アッローン、エーラー、アッラーなど多様ですが、パレスチナにはカシが数種類あり、イスラエル人はこれらの木を表すのに数種の語を使用していました。アブラハムがメソポタミアからカナンに移動し、シケムに到着したとき、モレの樫の木のところで祭壇を築いたとありますが(創12:6 - 7)、これはセイチガシ(Quercus calliprinos)と言われる常緑の樫の木と思われます。また、その後天幕を移して、ヘブロンにあるマムレの樫の木のところにも祭壇を築きましたが(13:18)、今でもヘブロンの町外れのギリシア正教の教会の庭にセイチガシの大木が保存されていて、「アブラハムの樫の木」と呼ばれています。一本立ちのものは、聖所や墓地の目標とされました(ホセ4:13,創35:8)。材質は堅く、彫刻、船のオールなどに使用されました(イザ44:14,エゼ27:6)。

花は3~4月に開花し、果実は12月頃に熟します。たくさんの雄花を尾状花序につけ、まばらに上に穂状花序についている雌花の下に垂れ下がっています。葉は卵形から長楕円形で、縁は歯状です。吉岡記念館横の「ベルスクェア」に植えられているのは、シラカシとボウガシです。(『関西学院チャペル週報』より)

テッポウユリ -Lilium longiflorum-

聖テッポウユリ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Lilium longiflorum
聖書等による標記:『野の花(ユリ)』

イエスが山上の説教で、栄華を極めたソロモンとの対照で言われた「野の花」(マタイ6:29)は、ギリシア語ではクリノンです。これは、旧約聖書において「ゆり」と訳されているシュウシャン(ショーシャンナー)の七十人訳の訳語です。山上の説教は、新改訳では「野のゆり」と訳され、英語の訳でも多くはlilies of the fieldと訳されています。しかし、このクリノンは実際のゆりよりも広い範囲の植物を指し、アネモネのことであるというのが有力な説です。

アネモネは、キンボウゲ科イチリンソウ属の多年生草本で茎高15~30cmで、4~5月頃赤色、ピンクなどいろいろの色の花をつけます。花は直径4~8cmで、花びらの基は黒っぽく、周りは白くなっています。パレスチナの至る所に生育し、平原に多く、特にガリラヤ湖畔に美しく咲きます。花は朝開き、夕方近くなると閉じてしまいます。
ゆりは、ユリ科ユリ属の多年草で、旧約聖書では美や繁栄の象徴として出てきます(雅歌2:1,4:5,ホセア14:6など)。これはマドンナ・リリーと言われるもので、白い花をつけ、キリスト教では純潔の象徴とされ、受胎告知によく描かれています。

なお、吉岡記念館横の「ベルスクエア」に植えられている「野の花」は、アネモネとカサブランカ、テッポウユリです。(『関西学院チャペル週報』より)

 

ヘデラ・ヘリックス -Hedera helix-

聖ヘデラリックス

植栽場所:ランバス記念礼拝堂南側
学名標記:Hedera helix
聖書等による標記:『西洋ツタ』

ウコギ科キヅタ属のつる性常緑植物で、学名をHedera helix(セイヨウキヅタ)と言います。ギリシア語ではキッソスと言い、聖書においてはただ1箇所マカバイ記二6:7に出てきます。そこには「毎月、王の誕生日には、いけにえの内蔵を食べることを、有無を言わせず強制され、ディオニソスの祭りがくると、つたの冠をかぶり、ディオニソスのために行列に参加することを強制された。」とあり、異教礼拝を強いられたユダヤの民は、豊饒と酒の神ディオニソス(バッカス)ゆかりのつたを冠にさせられたというのです。

さらに、パウロが「朽ちる冠」と言っているのは(-コリント9:25)、このつたで作られたものが意図されているようです。古代ギリシアの大競技祭において、競技者たちはつたで作られた冠を求めて競い合いましたが、パウロはこの冠を朽ちる冠とし、「朽ちない冠」を得るようにすることを勧めました。

イスラエルでは現在ガリラヤ上部、サマリアの一部に見られますが、余り多くない植物です。
垣根や家の装飾に栽培されています。常緑ですので、霊魂の不滅の象徴ともされました。(『関西学院チャペル週報』より)

ミモザ -Acacia dealbata-

聖フサアカシア

植栽場所:吉岡記念館西側
学名標記:Acacia dealbata
聖書等による標記:『アカシア』

マメ科アカシア属の木で、非常に多くの種類があり、普通直径40~50cm,樹高5~10mに至ります。鋭いとげがあり、自らを防御しています。シナイ半島やエジプト、死海やその南方の荒れ野に生育し、乾燥した荒れ野に枝を広げ、旅行者には憩いの木陰を与えてくれます。葉は羽状複葉で、春先に黄色い花をつけ芳香を放ちます。丸まったねじれた鞘の中に丸い種子があります。街路樹などで一般にアカシアと呼ばれているものは別の種類でニセアカシヤ(ハリエンジュ)と言います。

材はオレンジ色で、堅く重く,病虫害に強く腐朽しないので、幕屋や契約の箱の材料とされました(出25:5,10)。エジプトでは、アカシヤは永世の象徴とされ、ミイラの棺にも用いられました。

旧約聖書には28回ほど言及されますが、単数(シッター)で出るのは1回のみで(イザヤ41:19)、あとはすべて複数(シティム)です。シティムは地名でも出ますが(ヨシュア2:1)、アカシヤの生育と関連があったのでしょう。

木から出るガムは水にとかして目の病などの薬用に、乾燥して粉末にした木の皮は傷の消毒薬に、種子はそのまままたは粉にして下痢止めにされました。(『関西学院チャペル週報』より)

 

モミノキ -Abies firma-

聖モミノキ

植栽場所:吉岡記念館北側
学名標記:Abies firma
聖書等による標記:『モミノキ』

エゼキエル書31:8において新共同訳聖書で「樅」と訳されている語は、ヘブライ語でベローシュですが、この語は他の所では大体「糸杉」と訳されています(王上5:22,詩104:17,雅1:17,イザ14:8,41:19,エゼ27:6,ホセ14:9など)。新改訳聖書では多くは「もみの木」と訳されています。日本で「樅」というとクリスマスツリーに用いられるマツ科の常緑高木をさすが(吉岡記念館横の「ベルスクウェア」に植えられているのもこれ)、聖書に出るのはこれとは別の種類の糸杉のようです。

糸杉は、ヒノキ科イトスギ属の針葉樹で、南ヨーロッパ原産です。学名をCupressussempervirensと言いますが、キプロス島の名はこの木の名をとってつけられました。樹高15~18mに達し、筆を立てたように先細りに空に伸びる姿は美しいものです。果実は小さな球形をしており、乾くと亀甲形の亀裂を生じます。材質は堅く、船材(エゼ27:5)や神殿の床(王上6:15)などに用いられました。

エジプトではこれが棺材として用いられました。またこの木の樹形から、多産の象徴となり(ホセ14:9)、美しさのたとえとされました(雅1:17)。この枝からはイトスギ油が採取され、香料や咳止めに用いられています。(『関西学院チャペル週報』より)

 

ヤナギハッカ -Hyssopus officinalis-

聖ヒソップ

植栽場所:吉岡記念館東側
学名標記:Hyssopus officinalis
聖書等による標記:『ヒソプ』

シソ科ハナハッカ属の多年草です。イスラエルの山野の至る所に自生し、5~10月に小さな淡紫色の唇状の花をつけます。ヘブライ語ではエーゾーブと言い、エジプト脱出の時に、犠牲の血をこれに浸して、鴨居と入り口の二本の柱に塗ったとされています(出12:22)。またソロモンは、「レバノン杉から石垣に生えるヒソプにまで」樹木について語った、と言われています(王上5:13)。またこれは、清めの儀式にも用いられました(レビ14:4,詩51:8)。また、ヨハネ福音書19:29では、イエスが十字架上で息を引き取られる前に、人々が酔いぶどう酒を含ませた海綿をヒソプにつけて、イエスに差し出した、と言われています。
これは、花と葉に芳香があり、副食物や薬用ともされます。清めの儀式に用いられたことから清いことの象徴ともされます。

現在ヒソプと呼ばれているハーブは、ヨーロッパで栽培されているものでヤナギハッカと言われるものですが(ベルスクエアに植えられているのもこれ)、聖書に出るのはこれとは別の種類の学名をMajorana syriacaというものです。(『関西学院チャペル週報』より)

TOP