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関西学院事典(増補改訂版)

[ 編集者:学院史編纂室 2014年9月28日 更新 ]

人間福祉学部

【沿革】 
 関西学院大学における社会福祉の教育・研究は、1952年に設置された文学部社会事業学科から本格的にスタートする。
その後、学院創立70周年記念事業の一環として60年に、文学部社会学科と社会事業学科が文学部から分離して、社会学部が誕生した。
さらに99年には、社会学部において、社会福祉学コースから定員140名の社会福祉学科が開設された。
その伝統と歴史、経験に基づいた学びに、社会的注目の高いスポーツ科学や健康科学等を融合して、より幅広いフィールドで活躍できる人材育成を目指すため、社会学部社会福祉学科が社会学部から分離し、社会起業学科、人間科学科の3学科体制で、2008年4月に9番目の学部として人間福祉学部が誕生した。

 大学院における社会福祉教育においては、その源は1956年に文学研究科社会学専攻内での社会事業学関連科目の開設に見ることができる。
その後、61年に社会学研究科社会福祉学専攻博士課程前期課程が開設され、伝統的なケースワークの理論と方法を中心に、高い実践能力と評価能力を有する専門家・研究者を輩出してきた。
こうした歴史を踏まえつつ、少子高齢化やグローバル化などを背景にして、「人間と社会(環境)の交互作用」の中で生起し複雑化、多様化する社会福祉に関わる諸問題に対応すべく、より幅広い研究および教育、そして社会への貢献といった諸側面から対応できる大学院教育・研究基盤として人間福祉研究科人間福祉専攻博士課程前期課程・後期課程を2008年4月に学部と同時に開設した。

 専任教員は、芝野松次郎初代学部長以下37名、そのうち新規採用者は19名、学内移籍者は社会学部から17名、神学部から1名であった。
学部の新入生は315名(社会福祉学科127名、社会起業学科92名、人間科学科96名)、研究科人間福祉専攻は、前期課程17名(新入生8名、社会学研究科社会福祉学専攻から2年生への移籍者9名)、後期課程10名(新入生3名、同じく2・3年生への移籍者7名)であり研究科は全学年そろってのスタートであった。

 人間福祉学部では、人間と社会が互いに影響しあうことによって生じる諸問題に対し、最善のソリューションを提供するため、「人への思いやり(compassion)」「幅広い視野(comprehensiveness)」「高度な問題解決能力(competence)」の3つのCを育む学びを追求して、社会福祉、社会起業、人間科学の観点から、質の高い生活・社会の実現(Improving Quality of Human Life and Society)に貢献できる人材を育成している。
3学科が連携し、新しい発想やユニークな社会貢献の方法を模索して、人間のスピリチュアルな痛みに焦点を当てた支援、スポーツによる町おこし、途上国の経済的自立を促すフェアトレード、福祉ビジネス、一般企業のCSR(社会的責任)など、時代を先取りした視点、知識、スキルを学生は身につけている。

 カリキュラムについては、英語において1年生春学期より能力別のクラス編成を行い、第2言語として外国語以外の言語である「日本手話」を設けているのが特徴である。
演習・実験・実習科目および小集団教育を重視し「基礎演習」を1年生、「研究演習Ⅰ・Ⅱ」を3・4年生の必修科目としている。
学生の多様な学びに対応するため、研究演習Ⅰ・Ⅱにおける研究の集大成として「卒業研究」を設けている。
また、それぞれの学科においても、各々の教育目標に基づき、「ソーシャルワーク演習」「ソーシャルワーク実習」(社会福祉学科)、「社会起業インターンシップ(国内・海外)」(社会起業学科)、「人間科学フィールドワーク」(人間科学科)など、さまざまな実習科目を設けている。
資格に関しては、社会福祉学科生は指定科目の単位を修得することにより、「社会福祉士」および「精神保健福祉士」国家試験の受検資格を得ることができる。

 教育職員免許状については、社会福祉学科で高等学校教諭一種免許状(福祉)、社会起業学科で高等学校教諭一種免許状(公民)、人間科学科で中学校・高等学校教諭一種免許状(保健体育)、人間福祉研究科人間福祉専攻で高等学校教諭専修免許状(福祉)が、2007年12月25日付で文部科学大臣より認定を受けた。

【現状】 
〔学生〕人間福祉学部の入学選抜は、一般入試(全学日程・学部個別日程・関学独自方式日程)、推薦入試(指定校・協定校・提携校・継続校・関西学院千里国際高等部・高等部・OIS)、スポーツ能力に優れた者を対象とした入試、AO入試、帰国生徒入試、外国人留学生入試、編入学入試により行っている。

 入学定員は社会福祉学科130名、社会起業学科70名、人間科学科100名の合計300名である。
学生数は社会福祉学科1年生129名、2年生141名、3年生145名、4年生169名の合計584名、社会起業学科1年生73名、2年生81名、3年生88名、4年生81名の合計323名、人間科学科1年生108名、2年生115名、3年生100名、4年生129名の合計452名、人間福祉学部全体では1,359名である(2014年5月1日現在)。

〔教職員〕社会福祉学科に16名(学校医1名、任期制2名含む)、社会起業学科に9名(任期制1名を含む)、人間科学科に12名(宗教主事1名、任期制1名を含む)、学科共通言語教育に5名(任期制1名、英語常勤講師1名を含む)の合計42名の教員に加えて、人間福祉実習助手5名、実験実習指導補佐1名、教務補佐1名、専任職員7名、派遣職員1名、アルバイト職員4名からなっている(2014年5月1日現在)。

〔教育〕教育課程については、2009年度より社会福祉士・精神保健福祉士国家試験受験資格に関する法令改正に適合させるため、および日本社会福祉士養成校協会が開始したスクール(学校)ソーシャルワーク教育課程認定事業に申請を行うために、学則改正を行った。
さらに、12年度より学生の多様な学修ニーズに応えるため、および精神保健福祉士国家試験受検資格に関する法令改正に適合させるため大幅なカリキュラム改正を行った。
社会起業学科では、09年度より、2年生春学期にカナダ・クィーンズ大学のSchool of Englishが提供する12週間の英語学習プログラムに参加する英語短期留学がスタートした。
そして、本留学制度に参加する学生を経済的に支援するために海外語学研修奨学金を創設した。

 また、文部科学省の大学教育・学生支援推進事業【テーマA】大学教育推進プログラムに「社会起業家養成の革新的教育プログラム開発~基礎―専門―実践―応用教育を通じたウェルビーイングに寄与する社会起業能力の育成」というテーマで応募し、社会起業学科の申請が採択された(2009~11年度)。

〔学生活動〕2011年4月、浅野仁名誉教授からの寄付金をもって、「人間福祉学部優秀卒業研究賞」(あじさい賞)を設置した。
この賞は、人間福祉学部学生の学習・研究意欲を高め、勉学の向上を図ることを目的とし、最優秀賞3名、優秀賞11名(うち4名は協同執筆)を授与している(2013年度末現在)。

 また、学生と教員の親睦を図るため、学部長主催によるランチ・ミーティングとして「ブラウンバッグの集い」を開催したり、学生・教職員が共同してクリスマス祝会を開催している。

〔研究活動〕人間福祉学部発足時より、専任教員、学部生、大学院生、研究員らで構成される人間福祉学部研究会を発足させた。
2008年11月に査読付研究雑誌『人間福祉学研究』を、09年3月に人間福祉学部紀要Human Welfareを創刊した。

 大学院博士課程後期課程学生および大学院研究員を対象として、研究成果の発表の場である後期課程成果報告会を毎年2月に開催している。
大学院博士課程前期課程2年生を対象として、研究進捗状況を発表する前期課程中間報告会を13年度より5月に開催している。

 2008年11月には、高田眞治教授のご遺族からの寄付金をもって「人間福祉研究科優秀修士論文賞」(駒草賞)を設置した。
この賞は、人間福祉研究科学生の研究意欲を刺激し、その向上を図ることを目的とし、最優秀賞2名、優秀賞10名に授与している(2013年度末現在)。

〔研究科〕入学試験は9月の1次(前期課程:一般、社会人、外国人、後期課程:社会人、外国人、編入学)と3月の2次(前期課程:一般、社会人、外国人、後期課程:一般、社会人、外国人、編入学)の年2回実施している。
さらに2012年度より前期課程において人間福祉学部生を対象とした推薦入学試験を1次に実施している。

 入学定員は博士課程前期課程人間福祉専攻8名、博士課程後期課程人間福祉専攻5名、収容定員は前期・後期課程合わせて31名である。
収容定員に対する在籍者数は、博士課程前期課程人間福祉専攻18名、博士課程後期課程人間福祉専攻7名、合計25名となっている(2014年5月1日現在)。
大学院教員は博士課程前期課程指導教員24名、後期課程指導教員9名である(2014年4月1日現在)。

 また、1年以内に博士学位(甲号)申請論文を提出できると人間福祉研究科から認められた者に与える「博士学位キャンディデート」の認定を行っている。
博士学位授与者数は甲号20名、乙号2名である(2013年度末現在)。

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